#保護処分

 保護処分には,「保護観察」,「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」及び「少年院送致」の3種類があります。

児童自立支援施設又は児童養護施設送致


 主として家庭環境に問題のある18歳未満の少年に対し,開放的な児童福祉施設である児童自立支援施設又は児童養護施設に入所させて,家庭的な雰囲気の中で規則正しい生活を送らせることを通して,少年の自立に向けた支援や指導を行うものです。

以下は参考として『保護処分』の成り立ちを掲載します。

裁判所HP 法の常識 http://www.courts.go.jp/kouhou/mado_old54/hou.htmlより引用・抜粋


●はじめに
 大人が罪を犯すと,刑事事件として地方裁判所簡易裁判所で裁判が行われ,懲役や罰金などの刑罰を科されます。これに対して,少年の場合には,少年保護事件として家庭裁判所で取り扱われることになります。家庭裁判所では,裁判官が,家庭裁判所調査官という心理学,社会学,教育学等の人間関係諸科学の専門家による調査の結果を活用するなどして,少年が非行から立ち直り,健全な社会の一員となるために必要な処分を決定します。この処分の中心となるのが保護処分と呼ばれるものです。

 保護処分は,少年法第1条が,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」と規定しているように,少年の健全な育成を目的とする教育的処分であるということができます。

 保護処分には,「保護観察」,「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」及び「少年院送致」の3種類があります。

●保護観察
 非行性がそれほど進んではいないものの,普段の生活態度や友達との関係などでいろいろ問題を抱えている少年に対してされる処分で,家庭や職場での生活を続けさせたまま,保護観察所に指導監督をゆだねるものです。保護観察に付されると,専門のケースワーカーである保護観察官の指導の下に,少年が月に何回か民間の協力者である保護司を訪ねたり,保護司が少年の家庭や職場を訪問したりすることになります。そして,少年が保護司に生活の状況などを報告し,保護司が少年の問題点に応じた適切な助言や指導を与えるなどします。

児童自立支援施設又は児童養護施設送致

 主として家庭環境に問題のある18歳未満の少年に対し,開放的な児童福祉施設である児童自立支援施設又は児童養護施設に入所させて,家庭的な雰囲気の中で規則正しい生活を送らせることを通して,少年の自立に向けた支援や指導を行うものです。


●少年院送致
 非行性がかなり進み,性格の偏りなどが大きい少年に対してされる処分で,直ちに家庭に帰したのでは再び非行を繰り返すおそれが強いため,一定期間,少年を少年院に収容し,矯正教育を行うものです。少年の内面に働き掛けて,自分の犯したことがどれほど人を傷つけているかなどを理解させ,原因がどこにあるかを見つめ直させます。また,規律ある生活を通して,正しい生活習慣を身に付けさせ,健全なものの見方,考え方,行動のとり方などを養います。さらに,その少年に適した教科教育を行ったり,職業訓練を行ったりもします。少年院には,少年の年齢や心身の状況に応じて,初等少年院中等少年院特別少年院及び医療少年院の4種類があります。

●おわりに
 少年は,一般に心身ともに未成熟で,精神的に不安定な状態にあり,周囲からの悪い影響を受けて,衝動的に非行に走ってしまうことが多いのですが,非行を犯したとしても,成長の途上にあるため,教育によって立ち直る可能性を十分に秘めていると言えます。このようなことから,少年に対しては,大人に対するように,その行為をとがめ,刑罰という制裁を科するよりも,むしろ教育的処分によって,その性格や環境を改善し,社会に復帰させる方がふさわしいと考えられています。

 保護処分は,「保護」という言葉から,なんとなく少年を甘やかすといった印象を持たれがちですが,実際には,少年自身やその家庭の問題点などを改善し,再び非行を犯さないようにするために,程度の差こそあれ少年の自由に対して制約を加えるものであり,時には少年院に収容するなどの厳しい内容をも含んだ教育的処分であるということができます。

 また,少年であれば,どのような罪を犯しても刑罰を科されることはないかというと,決してそうではありません。たとえ少年であっても,事件の内容,少年の年齢,心身の成熟の程度などから見て,保護処分では適当でなく,むしろ大人と同様の手続によって刑罰を科することが相当と認められる場合には,一定の要件の下に,事件が検察官に送り返され,地方裁判所又は簡易裁判所で刑罰が科されることもあります。

 家庭裁判所は,少年一人一人をしっかりと見つめながら,温かさと厳しさをもって,その処分を決定しているのです。