【3】とある施設の取り組みとして


とある施設の『暴力の学習・連鎖』に対する取り組みを紹介します。

筆者:しろん(ペンネーム)児童養護施設 職員
http://blog.livedoor.jp/flowerluckiness/archives/22775943.html#comments より引用・抜粋

2005年06月10日 02:25

 私のいる施設では、3年前まで大舎制でした。見えない暴力が氾濫していた時代でした。この頃から、子どもたちが安心して生活していくための本格的な取り組みがはじまりました。


 最初にしたことが、卒園生を数人招き当時の話をしてもらうということです。ほとんどの職員が参加しました。当時その卒園生を担当していた職員ももちろんいました。


 その卒園生も、「ずっと心に閉まっておくつもりだった」が「施設を本気で変えてくれるなら力になる」ということで来てくれました。


 繰り返し言われたことが、「先生たちは気付いてないし、気付くはずがない」ということです。気付かないように俺たちはやったしやられてる。職員より施設の中のことは把握してる自信があった、と。そして、職員は、「見てなかった」と。職員とか正直言って当てにしてなかった、と。


 彼らが受けた凄まじい暴力、そしてやってきた暴力、本当にどうすることもできなかったのか、と思うと胸がとても苦しい。

(中略)
 私たちは自分たちにプレッシャーをかけ、子どもがどこにいるのか?おかしな雰囲気はないか?そういったことに過敏になることから始めた。


 子どもたちからは、「俺たちがされてきたときは何にもしてくれなかった!それなのにどうして俺たちがするのが駄目なんや!」と子どもたちは怒りに満ちていた。暴力は連鎖していた。彼らもやられてきたように、下の子たちにもやり返すのが当然。またその下の子がそれを繰り返す。


 まず、私たちにできることは、あのとき何もしてあげられなかったことを深く侘び、この暴力の連鎖を断ち切るために君たちにも協力してほしい、といったことを訴え続けていかなければならない。一番苦しいのは、この子達。暴力を受けて助けてもらえなかったのに、今度はここで、暴力を断ち切ってくれ、と言われる。理不尽で苦しかったに違いない。でも、我々の施設では、こうするしかなかった。今、はじまったのだから。


 「いかなる理由があっても暴力は絶対許さない」施設全体で確認した。


施設の中は混乱もしたが、子どもたち全体に話し続け、また子どもたちからも聞き続けた。2年間ほど試行錯誤である。そして、最近暴力はほとんどなくなった。施設形態の移行もその一つの要因でもあるが。。。

 かなり省略して話したが、一番苦しかったのは連鎖を断ち切った、現中高生である。今、小さな子たちと大きな子達がなんの緊張もなく関わっていられるのも、全部あなたたちのおかげなんだ。そのことをこどもたちにお礼し続けていく。

 これからも、わたしたち職員は子どもたちをしっかり見る、また、ぶつかり合うことから逃げてはいけない。子どもたちが安心して生活していけるためにはどうしたらいか?そのテーマを常に持ち続け、試行錯誤したとしても「行動」していくしかないと思います。


(筆者注:この話は決して「終わった」話、「成功例」などではなく、現在進行形であり、私たちは「暴力はなくなった」と安心してはいません。また、今日にでも発生しているかもしれないのです。現在も毎月、暴力・いじめについての調査や会議が行われており、会議後は、どういった話が行われたかということを職員から子どもたち全体に報告し、文書として各お部屋に掲示しています。)

*(著者注;しろんさんからの引用文は、ブログ本文ではなく、とある親記事のコメントでしたので、事前に掲載を依頼し、許可を頂きました。)

*次回は【児童間暴力・児童間性暴力】の 最終回です。